それは
深々と雪の降る、




ある日の出来事。 

































私、霧雨魔理沙は霊夢と一緒にいた。





いつもと同じように神社の周辺には雪が降り積もっていて
ザクザク雪の上を歩くと靴の中に溶けた雪が冷たい水となって染みてくる。








「ほんとにこっちにあるのか?霊夢。
いい加減足が冷たいんだけど」



「ほんとだって。……こっちよ」





こんな寒い日に霊夢と一緒に雪の上を歩いているのは訳がある。
なんと神社の近所に温泉が沸いたというのだ。






























「ほら、ここ」




 立ち止まった霊夢の前には、
轟々と噴き出すお湯の柱があった。



「うわ、ほんとにあったよ。これが間欠泉ってやつか」




噴き出す温泉の熱で間欠泉の周りにある雪は全部溶けてしまっていた。
今まで温泉は入ったことはあるけど、間欠泉なんてものは初めてみた。



まさに大地の神秘だぜ。


























「魔理沙だって、温泉入りたいでしょ?」



そう言って笑顔で振り返る霊夢に、
思わずドキリとした。



一緒に入れたらなって、思ってしまったから。


良かった、今が冬で。





赤くなった顔を寒さのせいにできる。


















「でも、このままじゃお湯には浸かれないな」





霊夢を真っ直ぐ見つめることができなくなって

 やり場をなくした私はまた間欠泉を見つめた。




相変わらず轟々と沸き続けるお湯の柱の音で

 私の早くなった心臓の音が掻き消される。
















地下に行けばもっとすごい温泉とかもあるんじゃないか? 














そう思ったら少しだけ

地下の世界に興味が湧いた。






















    


すべては突然湧き出した間欠泉から始まった。























一方その頃。



八雲の邸宅。 私、アリス・マーガトロイドは
八雲紫と向かい合っていた。









「不思議ね。なんでこの家の周りだけ雪がないの?
幻想郷は一面雪化粧をしているというのに」




八雲の家の庭には雪が見れないばかりか、
暖かい空気まで流れていた。


まるでこの周辺だけが季節が狂っているみたい。







「まぁね、私は寒いのが苦手でして。それで
今日はどういったご用件なのでしょうか?」




すっと紫の前にあるものを差し出す。


布でかぶせたそれが今回ここに訪れる原因を作ったものだ。










「それは、人形? でも少し変ですわね」











………………。













「これは……狂っているわね」






その通り。



この人形たちは全て私の手で作った物だ。



私は人形を操る際に魔力を込めたイトを使う。
イトで繋がった人形は¥決して私の意思には反しないし、忠実な部下として機能する。
だがこの人形たちはというと私の意思とは反して動き






何よりも、繋がってすらいない。







「この人形、間欠泉に近づいた時にいきなり狂いだしたのです。
これでも人形遣いとしての腕前は幻想郷で一番だと自負しています。
手元が狂ったとは思えません。原因はおそらく……」




「ふむ……」





紫は扇子をぽんと口元にあてて、
何かを考えている様子だった。




「そこで今日伺った用件なのですが、八雲紫殿を
幻想郷の大賢者と見込んでのお願いがあるのです」





「ふむ、私と貴方の仲ですもの。聞きましょう」







これが異変なのだとしたら、今まで起きたものとはまったくの異質。





異変の原因は間違いなく地下で起きている。
しかしある私は地下には足を踏み入れることができない。




異変は人間の手によって解決される。
地下には地上にはない危険が山のように。















そう、この異変で一番重要なところは……。






























魔理沙と一緒に動けるチャンスだということ!!




























――――今、視点を変えて紡がれる
               もうひとつの地霊殿
――――






















一方その頃。




私、風見幽香は太陽の畑にいた。
春夏秋は花で咲き乱れているのだけど、今は見渡す限り白一色の雪原だ。



「さむ〜」 



この季節は嫌いだ。私の愛でる草木たちはみんな眠りについているし
何より寒いのが苦手なんだよね。ひどい冷え性だから。



「あーあ、やまないなぁ」



今日も相変わらず空は灰色。深々と降る雪が傘の上に降り積もっていく。
本来なら今頃は私も冬眠についている時期なのだけれど、気まぐれは起こすものじゃない。








 
寝付けないのでちょうどいい暇つぶしはないものかと
ふらふら出歩いてみているところだ。


























なんとなしに空を見つめると ――



「……ふふっ、みーつけた」



――灰色の空を駆け抜ける一筋の黒い影があった。










傘の先端を黒い影向けてかざし
体を半身にして反動に備える。



「角度よし。照準よし。パワー……



ぎゅっと傘の手元を握り締め力をこめると、
私の体の周囲を光が包み、徐々に傘の先端へと収束する。




……完璧!」






ズドォーーーンッ!!




一瞬の閃光と衝撃。




収束し、臨界に達した光が空飛ぶ影に向かって伸びていく。
衝撃で生まれた風が周囲の雪を吹き飛ばし、隠れていた地面をむき出しにした。

































「ぎゃわあああああ!」







 放たれた光の先から聞こえてくる悲鳴。
どうやらうまく命中したみたい。


「やたっ!」






























「おーい、新聞屋さん。大丈夫?」 


 

落ちてきた影は文屋の射命丸文。
鬱陶しい天狗の新聞屋だ。



「あややや……大丈夫なわけないでしょ!
いきなりなんてことするんですか!
これ明らかな傷害事件ですからね!」
 




なんだかすごく怒っている。
虫の居所が悪かったのかな。



「ごめんごめん、やっちゃった」 
 

「うざっ!何スかその反省はしていないみたいな笑顔!」




「うるさいなぁ、大丈夫だって。ちゃんとギリギリを狙ったから。
それよりさ、何か面白いことない?起きてきたはいいけど暇で暇で」
 



ぽんぽんと文屋の肩についた汚れを掃ってあげる。




「知りませんよそんなこと、大人しくさっさと寝たらどうですか?
私はそれどころじゃないんですから!早く帰って号外の準備を始めないと」





号外? 何かあったのだろうか。

傘の先端を新聞屋に向けてかまえる。



「お・し・え・て?」


「ひぅ!……そ、それが、
博麗の神社に間欠泉が噴き出したんですが 一緒に地霊まで出てきちゃって。
調査をするってんで例の二人が地下に乗り出すらしいんですよ」
 






なるほど、いつもの異変騒ぎか。
 

生憎と私は他人の起こす異変騒ぎには関与しないことにしている。
いつぞやの花が咲き乱れた時は例外として。






























ん? ちょっと待てよ。




地下の異変か。たしか取り決めで地上の
妖怪は地下に踏み込んではいけないはず。
ということは人間であるあの二人しか、地下に行く事はできない。












魔理沙は地下に。
アリスは地上でお留守番。


















これは……。
 


















「チャ〜〜ンス!!」













この機を逃す手はない。

ふふふ、アリスにちょっかいを出すなら今しかない。
気まぐれも起こしてみるものだな。

























「ふふ、ふふふ……ふふふふ」









「……あの、もう帰ってもいいですか?」





































こうして三者三様の思惑のうちに、
地霊の異変が幕を開けたのであった。



     
博麗の神社が再建されてまもなく。
深々と雪の降る、そんな冬のある日の出来事である。



























アナタのそばに いたいから










いつもと同じ




雪の日の馬鹿騒ぎ。




でもどこか暖かい




そんな物語。

 



















………………………
………………
………








 







「待ちなさい! 怒ってないからぁ〜」



「ひぃいいいい!怒ってるじゃん、来ないでよぉおおおお!」




























………………暖かい?














内容はこんな感じになればいいなって本です。
挿絵はもりのほん先生です。 やったね^v^

 A5/68p/イベント価格500円

夏にお届けする季節感ガン無視な冬の話です。
最近あっついんで、少しでも涼しくなってくれたらな………なんて



嘘です。
プレビュー詐欺ですひゃっふー!

狙ってやったんじゃなくて、ネタ出しの時に地霊殿やってたらこれができました。
内容もこんなシットリした感じじゃなくて、いつものドタバタしてるだけのお話です。

シリアス展開は皆無ですすみません。
ジンジャーエール飲みたいなぁ〜って考えながらプレビュー作ったらこんな感じになっちゃったんです。
不思議ですね。



またしても妄想全快な感じですが、もし良かったら手にとってやってください。
ジンジャーエールでも飲みながら読んでやってください。

ところで
僕はビールをジンジャーエールで割ったシャンディガフが好きです。
ビアカクテルなんですけど、あっさりしてて暑い日には最適ですね^v^
関係ない話をしました。


どうぞよしなに!!