Laizthem



□□ webNovel

・「きみとぼくが捨てた世界」(創作)


登場人物
ぼく……主人公。
アイツ……親友。
コイツ……クラスメイト。
担任……教師。


 あの日、アイツは死んだ。


 ぼくには一番の友達がいた。俗に言う、親友というヤツだ。アイツもそう思っていたかは解らないけど、少なくともぼくは“親友”だと思っていた。
 そう、思っていた。
 アイツは、
「私には何の取り得もない。取り得のある君が羨ましいよ」
 なんて、しょっちゅう言ってた。ソレが何を意味していたのか、ぼくは知らなかった。
 アイツは、変わっていた。変わり者だ。そういうヤツは大体が『自分が変わっているヤツだ』なんて微塵も思ってない。アイツもそうだった。
「変わるってことは、今の自分を捨てることだ。私は、思うよ。いつ、この私を捨てようか、とね」
 あいつ、こんなことも言っていたな。でも、これは、警告だったんだ。ぼくは、ソレに気付かなかった。
 アイツは死んだ。
 あの日、屋上で。飛び降りて。
 あいつの言う、『自分を捨てる』は、死ぬことだった。
 アイツはちゃんと、ぼくに言ってきてくれたんだ。
 ぼくに相談に来てくれたんだ。
 ぼくを頼ってくれていたんだ。
 ぼくを、しっかり“親友”として見てくれていた!
 なのに――

 ぼくは、ソレに気付いてやれなかった。

『私には何の取り得もない。取り得のある君が羨ましいよ』
 生きる希望、望み、願い、夢。
 そういうモノを持っていることは素敵なことだ。
 そういう意味だった。
 今、気付いても仕方ないのに。
 ソレを言ってくれたときに、ぼくがアイツの生きる希望になってやらなくちゃならなかったのに。
 アイツが生きているうちに、しっかりと、言わなきゃダメだったんだ。
 アイツはぼくを頼ってくれた。
 アイツはぼくを好いてくれていた。
 ぼくもアイツを好きだった。
 嘘じゃない。
 嘘とか本当とか、そんなの関係ない。
 そもそもこの気持ちは、愛情とか、友情とか、そんなモノじゃないんだ。
 強いて言うなら、そのふたつを混ぜたモノ。
 いや、違うな。
 そのふたつを超越したモノ。

 ぼくはアイツが好きだ。

 それを、ちゃんとアイツに言ってあげなければダメだったんだ。
 アイツは何度も何度も、ソレを、伝えてくれたのに……。
 なんでぼくは、それに応えてやらなかったんだ?
 ぼくが応えていさえすれば、アイツも、『死』なんて考えなかったかもしれない。

『ぼくには一番の友達がいた。俗に言う、親友というヤツだ。アイツもそう思っていたかは解らないけど、少なくともぼくは“親友”だと思っていた』

 なにがだ!
 どこがだ!
 結局、ぼくの方が本気でそう思ってなかったんじゃないか!

「なあ、空って、飛べると思う?」

 飛べない。
 飛べるワケがない。
 だから――

 やめろ。

 ちゃんとぼくが応えていれば、アイツは死ななかったかもしれない。
 いや、死ななかった。断言できる。
『死』なんか選ばなかった。
 そうだ。結局のところ、ぼくがアイツを殺したんだ。

 アイツを殺したのは、ぼくだ――


 あの日。
 ぼくとアイツは屋上に来ていた。屋上は立ち入り禁止区域だが、そんなの守ってる生徒は皆無だった。
 もう、放課後もいいとこだ。他に人はいなかった。
 見事な夕焼けに染まった『朱』が、目の前に広がっていた。
「気持ち、良いね」
 アイツは言った。
 アイツは両手をメいっぱい広げ、今にも飛び立ちそうなほど、フェンスに背をあずけていた。
 ぼくも真似てみた。
 確かに、気持ち良かった。
 でも、少し寒い。
「寒いよ」
 ぼくは言った。
 秋の日の夕方というのは意外と寒いと思い知らされた。大自然の偉大さを、こんなところで思い知った。
「そうかな? 涼しくて気持ち良いけどね」
 異常だ。そう思った。
 やはりアイツはおかしい。
 でも、だ。
 アイツのそんなホントに心から気持ち良さそうに言うのを聞くと、自然とぼくも気持ち良くなってきた。
 いよいよぼくもおかしくなってきたらしい。
「うん。まあ、気持ちは良いね」
 自然と、そんな言葉も漏れる。
「でも、寒いんだろ?」
 それも本当だった。
「……うん」
「でも、それでも。気持ち良いね」
 コクッ と、頷いた。
 しばらくの間、ふたりで風にあたっていた。
 気持ち良かった。
 なにもかも、風が吹き飛ばしてくれるようで、気持ち良かった。
 そう。なにもかも。
 ぼくでさえも……。

 一時間くらい、そうしていただろうか?
 さすがに寒くなってきた。
 もう、あがろう。
「帰ろうか」
 ぼくはそう言った。
「……」
 アイツに、返事がなかった。
 ?
 少し、怪訝に思った。
 なんだ? どうしたんだ?
「ねえ。帰らないの?」
「……っと、なに?」
 今まで、意識がどっかへお出かけしていたようだ。お帰り。
「帰らないの?」
 三度目の呼びかけ。でも、今度は通じた。
「そう、だね」
「じゃあ、帰ろうか」
 そう言って、ぼくは校舎へと続く扉の方へ歩きだした。
 途端。
「いや、待って」
「?」
 どうしのだろう?
 ぼくは、立ち止まり、振り返った。
「どうしたの?」
「いや、もう少し、此処に居たくてね」
「考えごと?」
 十中八九そうだろう。
『その場で考え出したことは、その場でなければ考えることが出来ないんだ。別の場所へ行くとね、別のことが頭に入ってきて、ごちゃ混ぜになってこんがらがってしまう。ふたりでやる下手なあやとりみたいにね』
 そう、アイツは言っていたからだ。
「うん。まあ、そうだね」
 やっぱりね。
「なに考えてるの?」
 アイツは、フェンスから身体を離した。手も広げるのをやめた。
 そして、フェンスに向き直った。
 ぼくは、扉に近づいた分だけまた戻った。
 アイツは、言った。

「なあ、空って、飛べると思う?」

 ……ソラ? この、朱い、空のことかな。
 ああ、そうか。アイツもぼくと同じことを感じたんだ。
 そう、思った。

『気持ち良かった。
 なにもかも、風が吹き飛ばしてくれるようで、気持ち良かった。
 そう。なにもかも。
 ぼくでさえも……』

 アイツも、同じことを思ったんだ。
 やはりぼくとアイツは親友だ。
 ぼくは、嬉しくなって、言った。

 ソレが、禁断のコトバとも知らずに……。

「飛べるよ。ぼく、感じたんだ。なにもかも、ぼくでさえも、この風が飛ばしてくれるんじゃないかって」
 アイツは、俯いて。
「そう……」
 そう言った。
 あれ? ぼくと同じこと感じたんじゃないのかな?
「そう、だな」
 ああ、やっぱりぼくと同じこと感じたんだ。
 アイツは、フェンスに手をかけた。
 いや、手だけじゃない。足もかけた。
 ? なにをするんだ?
 アイツは、フェンスを乗り越えた。
「危ないよ」
 ぼくがそう言っても、
「大丈夫だよ。私は飛べる。だろ?」
 と答えた。確かにぼくはそう言った。
「でも、危ないよ」
 アイツは、微笑んで。
「解ってるよ」
 とだけ言った。
 そしてアイツは、また、メいっぱい両手を広げた。
 でもさっきと違った。
 身体の向きが違った。
 さっきは、フェンスを背にしていた。
 でも今は、フェンスの方に向いている。

『さすがに寒くなってきた』

 本当だった。でもあれは、寒さじゃなかった。寒気だった。
 これから起こることに対する、異常なまでの、寒気。

 アイツは、まるで後ろにフェンスがあるかのように、身体を傾けた。

 フワッ

 アイツが、飛んだ。
 風にさらされて、飛んだ。
 そして――

 グシャッ

 落ちた。
 アスファルトの硬い地面にアイツが砕け散った。

 !

「な!?」
 慌てて、ぼくも身を乗り出し、下を見たときには、ただ、肉の塊が飛び散っているだけだった。

 アイツは、飛んだ。

『飛べるよ。ぼく、感じたんだ。なにもかも、ぼくでさえも、この風が飛ばしてくれるんじゃないかって』

 それは、ある意味本当だった。
 風が、アイツの命を、生きる希望を……。
 ――飛ばした。

 アイツは、ぼくの目の前で飛んだ。
 そして――
 アイツは、ぼくの目の前で死んだ。

 アイツは、ぼくの目の前で生きる希望を失くしたんだ。
 ぼくの言葉が……。
 いや。
 ぼくが、アイツを殺してしまった――


 その次の日に、お通夜が行われた。
 ぼくは、行かなかった。
 三日後にやったお葬式にすら、ぼくは行かなかった。そもそも、その日は学校も休んだ。
 そして、ぼくが学校にいったのは、さらに三日後だった。

「なあ、アイツのお葬式、なんで来なかったんだ?」
 学校にくるや否や、そう訊かれた。
 お前に言ったって、解らないよ。
 私は、そう言ってやりたかったけど、言わなかった。
 そう、私。
 あの日から、自分の一人称を『ぼく』から『私』へと変えた。アイツは、一人称が『私』だったから。ただ、それだけのこと。
 なにも答えない私を見て、さらにコイツはことあろうかこう言いやがった。
「……冷めてんな。親友が死んでも、どーでもいいワケ?」
 右の拳に自然と力がこもる。
 殴ってやりたかった。
 いや。
 殺してやりたかった!
 なんにも知らないくせに!
 アイツを変人扱いするだけして、近づきもしなかったくせに!
 よくもそんなことが言えたものだな!
 どうせお前は、葬式に行くだけいって、義理の涙を流して、悲しい悲しい言ってただけだったんだろう!
 そう、葬式だ。『お』なんて、付けなくていい!
 お前等が来た葬式なんて、敬語を使うにまるで値しない!
 お前等みたいなのを見たくなかったから、私は葬式に行かなかったんだよ!
「やっぱりみんな、あんなヤツでも死ぬと悲しいらしくてさ、もう、みんな、泣いてたんだぜ? なのに、お前は、なんでそんな冷めてんだ?」
 ふざけるな!
 悲しい?
 泣いてた?
 お前等、なにが悲しいのか、ホントに解ってんのかよ?
 葬式か? 葬式なんか、悲しいことじゃない。
 葬式が悲しいんじゃないんだ。
 一体お前等のうち、何人がそのことに気付いた?
 いないね。絶対いない。
 この世に絶対は無いってよく聞くけど、これは例外だ。
 断言しよう。
 お前等は、悲しいふりをした。それを、意識的にか無意識的にかは、人によって違うだろうけどな。
 お前等は、義理で涙を流した。中には、『悲しい雰囲気だと涙が出ちゃう』とかいうふざけたヤツもいるだろう。
 お前等は、
『人が死ねば悲しい。悲しいときは涙を流す』
 そう、認識しているだけなんだ。
 ふざけるなよ……。
 私は、さらに握りを強くした。
 相手にばれないように、ギリギリと音が鳴らないように。そのなかで、最大限の力が出せるように……。
「なあ、何とか言ったらどうだ?」

 バゴンッ

 私の右ストレートが、ものの見事に相手の鼻っ面にテラヒットした。
「うがぁぁぁぁぁぁあああっ!」
 そして私は席を立ち、教室から出ていった。
 今日も、休もう。
 中学なので、義務教育を辞めれないことが、今の私には一番痛かった。
 そして、私が再び学校へ行ったのは、それからさらに三日後だった。

 三日後、学校に来てみると、クラスの連中の私に対する態度がガラッと変わっていた。
 今までは可もなく不可もなく、当り障りなく接してきていたが、今は、完全に無視状態だった。
 今までの、アイツと同じ。
 やっと私は、アイツの境地に達した。
 相手にされないことが、かえって小気味よかった。

 一週間無断欠席。
 解ってはいたけど、職員室に呼び出された。
 思ったよりも、説教は短かった。
「やはり、人が死んで、ソレが親友だったから(ソレなんて言ったときは殴りたかったが)、気が滅入るのも解るが(ホントに解んのかよ?)、いい加減立ち直れよ」
 と言われただけだった。
 私は、立ち直っているさ。

『変わるってことは、今の自分を捨てることだ』

 そう、『私』は捨てたんだ。
 昔の、『ぼく』を……。

 秋の風が、そよいでいた。


 月日というのは無情なものだ。
 と、誰かが言っていたような気がする。
 冬が来たのだ。
 いや、厳密に言えば、新しい年が……。

 冬休みが明け、そしてその頃には、誰もアイツのことを覚えいなかった。
 私に対する態度は相変わらずだったけど。
 月日というのは無情だ。オレもそう思う。
 あいつ等みんな、自分が流した涙を忘れたんだから。これこそ、あいつ等が義理で涙を流した証拠ではないか。
 今すぐにでも、学校を辞めたかった。
 でも義務教育はそうはいかない。
 そして何より――
 私には生きる目的があった。
 生きる希望、望み、願い、夢。ではない。
 目的だ。
 私はソレを成し遂げるまで、学校を辞めない。
 私はソレを成し遂げるまで、絶対に死なない。
 そう、決めたんだ。

 元々屋上というのは立ち入り禁止区域だった。だが、アイツが死んでから更に厳重になった。
 だが、そんなことしなくても、『人間が死んだ場所』には、自然と誰も来ようとしなかった。
 そして、教師側もそんな厳重にすることないと思ったらしく、今まで通りの『立ち入り禁止』の札が出てるのみになった。
 例外は、どこにでもいるものだ。
 それが、私。
 私は、ずっと屋上に通い続けた。
 あの日から、ずっと――


 冬。
 イコール寒い、だ。
 そんなことは充分解ってたけど、私は、毎日欠かさず屋上へ通い続けた。
 寒くはなかったんだ。
 こんな寒さ、あのとき感じた寒気に比べればへでもなかった。
「気持ちいいね」
 毎日放課後に屋上行って、両手をメいっぱい広げて、フェンスに背をあずけて、そう呟いて、一時間くらい、考えごとするなり、ボ〜とするなりして、そのまま過ごして、そして帰る。
 これが、私の一日の全てだった。

 いつの日か、きっと――

 アイツにに会えると、信じているから――

 三学期の行事は、(学年末テスト以外)全てサボった。


 春。
 また、月日が巡った。
 進級した。三年になった。
 でも私は、やっと近づいた。そう思った。

 屋上も、暖かくなった。
 ここで人が死んだというのは、小学生も知ってたらしく、新一年生は、誰も屋上に来ようとしなかった。もちろん、新二年生も、新三年生も。
 この学校は一年から二年に上がるときはクラス替えを行うのだが、二年から三年に上がるときはクラス替えがない。春先にある修学旅行の班編成やらなにやらを、二年のうちから決める為である。そのため、よっぽどのことがない限り、担任も代わらない。
 私を相手にしないクラス。そっくりそのまま、三年になったワケだ。
 未だみんな私を相手にしないが、私としても未だにその方が良かった。
 当然、修学旅行の班編成も、私独りだ。
 ひとりはいかん、と、担任に言われたので、班員のところにアイツの名前を書いたらOKをくれた。話の解る教師でよかった。

 修学旅行が来た。
 奈良、京都。定番だ。
 一日目はクラス単位で動く、奈良観光。
 薬師寺と東大寺をまわった。
 大仏はただ座ってるだけで、何も語らない。それが、無性に悔しかった。
 二日目から、班行動。金閣寺、銀閣寺をまわった。ふたつしかまわらなかったので、時間的余裕がかなりあった。
 銀閣寺の方がオレの好みではあった。たぶん、アイツも。
 こういう寺、創ったのは足利義満だの足利義政だの言われてるが、ヤツ等は命令しただけで、創ったのは農民だよな。
 義理の涙と似ている。
 そんな気がした。
 そして最終日。三日目。
 清水寺へ行った。
 入場料ばかりが高くて、私的にはあまり大したことなかった。

 清水の舞台から飛び降りる。

 私は、ここで目的果たそうかと思ったけど、大したことなかったので、やめた。
 それに、やっぱり目的達成は、あそこでやりたいから……。

 京都駅に着いたのは、私が一番早かった。全員そろわないと出発出来ないので、駅前にある京都タワーでヒマを潰してた。

 何も感銘を受けなかった。

 それが、修学旅行の感想だった。


 夏。
 夏休み前の六月と七月にはこれといって行事がない。
 球技大会があったが私はフけた。
 ああ、あとは生徒会総選挙か。二学期から三年は引退だからな……。私には関係なかったから、これもフけたけど。
 くだらない行事ばかりだ。
 定期テストだけは、欠かさず出た。
 それも意味のないことだと、知ってはいたけど。これはやらないと、アイツに笑われそうだったから……。

 ああ、早く夏休みよ来い。

 そして――

 さっさと終われ。


 夏休み。
 宿題を、七月で終わらしてしまった。
 他の連中は、塾の夏期講習に行って、必死こいて受験勉強をやっている。
 私はやっていない。
 受験勉強が、受験が、高校に入学する事が、私の目的ではないから。

 花火大会があった。
 どうして地元というだけで、他のとこよりショぼく見えるのだろう?

 祭り。
 騒がしいのは好きじゃない。
 人ごみも、好きじゃない。
 祭り=やかましい週末。
 私の祭りに対する認識はその程度だ。

 あとは、……。

 ――何も、無い――

 ああ、登校日というのがあったけど、これもサボったっけ。


 秋。  やっと、一年が巡った。
 長かった。
 異様に長く感じた。
 目的を果たすために、この一年間、耐えに、耐え抜いたんだ。

 屋上に始まり、屋上に終わる。

 それで、ケリをつける。
 私の目的を果たす日が――

 あの日が――

 近づいている。着実に――

 そして――

 あの日が、来た。
 一年前、アイツが死んだ、あの日が――
 ああ、私は、今日まで、学校に行ったんだ。
 ああ、私は、今日まで、生きてこれたんだ。
 ああ、私の目的が、成就する。
 同時にソレは、生きる目的を失うことになる。
 それは、もういい。覚悟のうえだ。
 ……いや、ひょっとしたら。
 今まで生き抜いたことこそ、覚悟のいることだったのかもしれない。
 そうだ。私は目的を、直ぐではなく、一年待って実行することを決めたのだから……。
 そう、私は――
 死ぬために、今日まで生きてきたんだ。
 あいつと同じ日に死ぬ為に……。

 屋上は、やっぱり誰もいなかった。
 貸切。
 最初から、最期まで。
 秋の風が髪と肌をくすぐる。
 ああ、気持ちが良い。
「さあ、逝こうか」
 私は、フェンスに手をかけた。
 いや、手だけじゃない。足もかけた。
 そして、フェンスを乗り越えた。
 更に、メいっぱい両手を広げた。
 フェンスの方に向いて。
 私は、まるで後ろにフェンスがあるかのように、身体を傾けた。

 フワッ

 私は、飛んだ。

 風にさらされて、飛んだ。


 私は、飛んだ。
 私は、堕ちて、逝く――


Our World is WORLD END.


後書き

 高校時代に初めて書いた小説。
 何だこのストーリーは…。暗っ。
 初っ端からこんなの書いてたのかよ私は。
 一応、ぼくもアイツも性別を名義してはいないので、どんな性別でのカップリングを想像してもOKな様に書いた、つもり。
 その為、本家HPに載せてあるのを少し改変してみた。
 一人称だけだけど。


2002年09月01日――作:mitsuno